ダンドゥット歌手のザスキア・ゴティックがインドネシア国章侮辱問題で大炎上!

インドネシアの有名ダンドゥット歌手ザスキア・シンタ(通称 ザスキア・ゴティック)がインドネシアの国章を侮辱したとして、ネットのみならず放送委員会、国会等からの集中非難を受け大炎上中、現在、刑事事件にまで発展しつつあります。事の発端は、RCTIテレビ局のバラエティー音楽番組「Dahsyat」における彼女の「アヒルポーズ」発言。本件は、気さくで冗談好きで人のいいインドネシア人というイメージとはまた別の、戦後生まれの日本人的には体感的にわかりにくいであろうナショナリズム的な側面が垣間見られる象徴的な事例でしたので、当サイトでも少し紹介してみたいと思います。

 

トレードマークのアヒルで大炎上

2016年3月15日、インドネシア民放テレビ局RCTIのバラエティー音楽番組「Dahsyat」の「常識クイズ」的なコーナーで、他の女性アーティストらが真面目に回答していく中、インドネシアの人気ダンドゥット歌手ザスキア・ゴティック(以下、ゴティック)は、「パンチャシラ5章の国章マークは?」という質問に、「アヒルポーズ」、また「インドネシアの建国記念日は?」という質問には「8月32日、朝のお祈り後」と明らかに受けを狙った日本的に言えばサービス精神旺盛な回答をしました。ちょっとオーバーですが、例えるなら、明石家さんまの冠クイズ番組で各お笑い芸人達がプロのお笑い精神に則ったトンチンカンな回答をすると言った感じでしょうか(ちょっと言い過ぎか…)。因みにパンチャシラとは、インドネシアの国是となっている建国五原則のことです。このパンチャシラ第5章ではインドネシア人としての道徳的な規範が謳われており、設問の回答となる国章のマークは「稲穂と穂綿」です。これに対してゴティックは「アヒルポーズ」と答えた訳ですが、このアヒルポーズ、実は、彼女のトレードシンボルで、ゴティック(Gotik)の名前の由来はGoyang Itik(アヒルのダンス)の省略から来ています。因みに以下が彼女の代表的なヒット曲「Satu Jam Saja(1時間だけ)」のミュージックビデオです。

 

 

セクシーアヒルダンス!!(でしょ?!ぶっちゃけ自分は彼女のファンっす)ダンドゥットとは、インドネシアで人気の大衆音楽の一つで、一般的に女性アーティストは、セクシーな衣装を纏い腰を揺らしながら、こぶしの効いた哀愁の漂う歌を歌います。インドネシアの大衆ダンスミュージックと言ってもいいと思います。

さて、このゴティックの一連の発言が「国章をバカにして国家を冒涜した」とネットで大炎上してしまいました。これを受け、翌日3月16日に彼女自身が番組内で本件の騒動について直接謝罪しました。多民族国家のインドネシアでは統一的な国家機構を維持するためナショナリズムを重視します。こういうネタの場合、日本なら「謝罪」を以て本件終了!になりそうですが、インドネシアではどうも「謝罪」だけでは済まされない模様です。

 

 

国会、地方代表議会、そしてついに警察が捜査を開始!

ゴティックが謝罪した後も本件は収まりを見せませんでした。それどころが更にヒートアップして、例えばインドネシアのゴシップ好きなオンライン・メディア「merdeka.com」では、この2日で本件に関する記事を立て続けに26本上げています。以下に、各界の代表的な声を拾ってみます。

 

国会副議長アグス・ヘルマント

「国家シンボルの冒涜者は重罪に処されるべきだ。これらは法律に規定されている」

 

国会議員タントウィ

「極めて残念。国のシンボルは冗談のネタにされるべきものではない。人々の気持ちを傷つけるだけでなく、法律にも違反している」

 

汚職監視NGO団体 LSM KPK団長フィルダス

「彼女は何が起ろうと受け入れるべきだ。跪き、紅白に口づけし、インドネシ・アラヤ(国家)を千回歌わなければ我々の気持ちは収まらない。」

 

「放置はあり得ない。謝罪だけでは許されない。法の手続きを踏ませる。彼女は先のインドネシアの英雄たちの偉業、闘争に敬意を払わない。牢獄で罪を贖い、その苦さを味わうべきだ。ザスキア・ゴティックにはそれがお似合いだ。 一国民として彼女を警察へ訴える」

 

地方代表議会第三委員会副議長ファヒラ

「本来敬意を表すべきものを汚した。例えば、外国人が我が国を侮辱したとしよう。我々は当然、怒りを露わにするだろう。同じこと。よって、ザスキア・ゴティックの件を通報するためにここ(警察)へ来た。彼女を訴えるように私の下に573通のメールが入った。20の団体が彼女を訴えるためにスナヤンへ集まっている。」

 

ということで各団体、個人が警察へ通報したことにより、法的手続きに則り、インドネシア警察が動き出しました国旗、国語、国章、国歌についての冒涜という罪状のもとに捜査が開始される模様で、刑期は最高5年、罰則金1億ルピア(約100万円)とのことです。また、問題発言を防がず助長したとして番組進行役のデニーも同時に訴えられています。

更に、インドネシア放送委員会もRCTIに対して、放送コードを著しく逸脱した不法行為だとして書面にて最終通告を通達、次回は番組の停止措置を取るとしています(なお、放送協会自体に大きな権限はなく、本件は刑事事件に発展する可能性があるにもかかわらず、書面通達だけで早々に幕引きした感もあります)。

 

特に法律が絡むコードには気を付けよう

さらに先の地方代表議会議員ファヒラが「彼女は小卒だろう。低学歴に重たい質問を出す方も問題だ。彼女には好きなご飯とか、国家と関わらない質問が妥当」※1 と述べ(蛇足ながらインドネシアの現内閣で国民評価の高いスシ海洋水産大臣は中卒ですけど)、それにメディアも追随したりと収まることを知らないザスキア・ゴティック国章冒涜問題ですが、この事件は我々インドネシアでは外国人である日本人も注視すべきだと思います。例えば、冗談や刺激的な批判方法が大好きなインドネシア人ですが、表現を行う上で一定のガイドラインが存在していること。単に文化の違いでしたらそれは、相互理解や見解の不一致、妥協などの選択肢を自助努力でつかむことが可能ですが、法律に規定されたことは一筋縄ではいきません。我々も下手をすると5年刑務所に突っ込まれることになりかねません。私もこの文面は一応気を使いながら書いてます。なんせ、私は純粋に彼女のファンですからw

その他、外国ではネタや冗談でも紙幣を破いたり国旗に何か悪戯するのはやめたほういいと思います(いないか、そんな方は)。外国では何があるかわかりません。経験的にアジア・アフリカでは同様のケースが多い気がします。私はアフリカの某国において、これで軟禁されたことがあります(笑 スカルノ・スハルト政権時代を知らない日本人とインドネシア人の交流が今後ますます活発化するであろう中、少し気を留めておきたい事例でした。
※1 今回の問題を安直に小卒に求めるような品の無さは個人的に好かないので、一応フォローしときますと、彼女は以前も低学歴でいびられたことがあり、その際にTVで「私は金銭面で学校に進めなかった。私のことを小卒という人がいるが、それは事実。それは前から私も言ってる。英語学校、個人学校に行って宗教も深く学びたい。重要なことはわかってる。特に宗教は。もし運が良ければ大学にも言ってみたい」と独白しています。

 

最後に、この文章はダンドゥットガンガンかけて書いてますw
おまけ: デビュー当時の初々しいゴティック

 

 

 

参考:

国会議員の見解 merdeka.com
汚職監視市民団体LSM KPKの見解 merdeka.com
地方代表議会の見解 merdeka.com
放送委員会の見解 merdeka.com
小卒の話 merdeka.com

 




 


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