インドネシア政府、燃料補助金削減による予算再割当て内訳発表

ジョコ・ウィドド新政権は、発足後間もない2014年11月18日、 燃料補助金の削減による化石燃料の値上げを早々に実施、ガソリン価格は6,500ルピアから8,500ルピアへ、軽油価格も5,500ルピアから7,500ルピアに引上げられ、更に、今年2015年1月1日からガソリンに対する補助金を撤廃、軽油に関しては1リットル、1,000ルピアに補助金を固定され、インドネシア政策の鬼門と言われる石油燃料補助金削減政策に次々着手してきました。過去OPECの加盟国であり石油輸出国であったインドネシアは10年前から石油純輸入国となっており、又、自国の経済発展が進み燃料消費が増大する中、長らく政府予算に対する石油燃料補助金の圧迫(歳出に占める割合約14%)が懸念されていました。

ジョコ・ウィドド大統領は補助金の削減政策について、「補助金の削減ではなく、然るべきセクターへの再配分である」と定義し、大統領曰く煙に消えてしまう莫大な予算を、インフラ開発等生産性に寄与する分野、及び、その土台となる社会福祉分野へ再分配する必要性を訴えていました。

さて、先日、インドネシア内閣官房公式サイトにて、これらの石油燃料補助金削減政策による予算再割当ての内訳が発表されましたので、下記にて紹介します。

国民に感謝、ジョコウィ大統領が燃料補助金予算の再配分について説明

5月25日朝、ジョコ・ウィドド大統領は、「皆の協力及び燃料節減のおかげで、これらの燃料補助予算は、貧困層の国民及び生産的なプログラムへ再配分されることが可能となり、2015年国家予算編成でその額は186兆ルピア(約1.7兆円)に達した」と述べ、更に、全インドネシア国民、特にバイク所有者が政策に理解を示したことに対して謝意を表しました。

ジョコウィ大統領によると、石油燃料補助金削減で得た予算は、大きく分けて以下9つの部門に分配されるとの事です。

1. 社会保護予算、即ち、福祉家族カード(KKS)及び、貧困層の子供や妊婦のための希望家族計画(PKH)プログラムのために、14.3兆ルピアを追加。

2. 健康保護予算、即ち、インドネシア健康保険カード(KIS)180万名分増刷のために4,220億ルピア、国立専門病院の設備、インフラ増設のために2.2兆ルピアを追加。

3. 村落基金のために11.7兆ルピアの予算を計上。

4. 海洋情報システム及びロジスティクス、海洋国境警備増強のため3.3兆ルピアの予算を計上。

5. 教育部門、特にインドネシア教育支援カード1,000万名分増刷(合計で1,920万名)のため6.4兆ルピアの予算追加。

6. 農業部門、特に灌漑施設や農業機器、肥料、有料品種苗による食糧生産向上のために、16.9兆ルピアの予算を計上。

7. 公共事業・公営住宅部門について、8.4兆ルピアを灌漑設備、貯水池、洪水対策費として、9.1兆ルピアを飲料水、環境衛生、集落開発へ、そして10兆ルピアを道路インフラ及び国境道開発へ、最後に5.75兆ルピアを高速道路建設予算に計上。

8. 運輸部門に関して、港湾設備、船舶建設及び情報システムのために、11.9兆ルピアを予算計上。

9. 地方特別給付金の向上、即ち、灌漑施設に9.3兆ルピアを、農業部門へ5兆ルピアを、健康専門サービス向上のために1.4兆ルピアを予算計上。

更にジョコウィ大統領は、「もし補助金の再編が成されない場合、政府は貧困層と生産部門に対する予算配分を行えないことになり、即ち我々はいつ爆発するか分からな時限爆弾を抱えているという意味となる」と述べ、大統領コミュニケーションチーム、テテン・マスドゥキも、「燃料補助金の再編が行われない場合、2020年には歳入の全てを燃料補助金に費やすこととなり、それは国家の崩壊を意味する」と補助金再編政策の正当性を訴えました。

 

以上

pengalihan subsidi BBM

 

さて、上記インドネシア内閣官房公式サイトの発表内容をまとめてグラフにしてみました。そしてこれはグラフに対する評価ではないのですが、 まず、燃料補助金の削減額186兆ルピアを貧困と生産分野に対して再予算化するとのことでしたが、上記9項目の合計額は120兆ルピアで60兆ルピアの用途が不明です。概要とはいえお粗末で、これでは予算運用の不透明さを疑われても仕方がないでしょう。政策的には、公共事業費と地方予算が全体の過半数を占めており、ガソリン補助費の半分以上が地方のダムや道路建設などのインフラ開発へ廻される模様です。次に、農業・海洋・貧困対策がほぼ同比率で並び、最後に教育と保健となっています。ジョコウィ政権発足以来、インドネシア健康カードや福祉家族カードなどの社会保障政策、そして「精神革命(Revolusi Mental)」といったインドネシア教育の再構築が提唱されてきましたが、今回の予算配分に関しては、この3分野への割当は最低となっています。 186兆ルピアは莫大ですが、全体的に振り分けるとまあ、こんな感じに落ち着いたというところでしょうか。

 

参考:
http://setkab.go.id/berterima-kasih-kepada-rakyat-presiden-jokowi-jelaskan-alokasi-pengalihan-anggaran-subsidi-bbm/
画像:
http://www.merdeka.com/uang/bahaya-jika-harga-bbm-sering-naik.html

 




 


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