インドネシアのジャカルタ-バンドゥン間を走る高速鉄道(新幹線)建設の発注先が、 今年8月以降に決まる模様です。 国営企業相リニ・スマルノによると中国側の実行可能性調査が完了するのは6月下旬、又は7月上旬になるとのことで、更にインドネシア側で本プロジェクトを実質的に担当している国営企業ウィジャヤ・カルヤ社によると、8月には政府へ調査報告をおこない、少なくとも来年頭の工事着工を目指しているとの事です。
尚、本区間の日本側による実行可能性調査は2014年11月に完了していましたが、先日のジョコ大統領訪中時に取り交わされたインドネシアと中国による「ジャカルタ-バンドゥン間高速鉄道建設の覚書」締結で日本としては不意を食らった格好になりました。さて、発注先はどこになるのかというところですが、現地要人の発言や現地メディアの発表を見る限り、現状は割って入った中国に歩があるような雰囲気です。少し見てみましょう。
インドネシア内閣官房公式発表
「ジョコ大統領は中国に対し、24の港湾、15の空港、1,000キロの道路、8,700キロの鉄道、総量3,5000メガワットの発電所建設といったインフラ建設を強く要望しました。 中国はジャカルタ-バンドゥン、そしてジャカルタ-スラバヤ間の高速鉄道(新幹線)にも携わってくるでしょう」
これは先日のアジア・アフリカ会議開催期間中に行われたインドネシア・中国二国間会議について、インドネシア内閣官房公式サイトから発表された報道記事です。ジョコウィはどの国に対しても投資誘致をしているので、これ自体は構わないのですが、同サイトで発表された日本・インドネシア二国間会議の記事にはインフラ開発に関する記載がほとんどありませんでした。日本についての記事はコチラです。そして、次に、同記事に掲載された習近平国家主席のコメント。
「中国政府はすでにジャカルタ-バンドゥン高速鉄道(新幹線)の建設に合意している。そして、これでジャカルタ-スラバヤ間の新幹線建設の門戸も開かれた」
まるで、既に受注したかのような言いっぷりですが、更に中国はジャカルタ-バンドゥン間高速鉄道建設だけでなく、ジョコ新政権が計画中断を発表したジャカルタ-スラバヤ間の高速鉄道建設も視野にいれていることが見て取れます。 インドネシア・中国二国間会議の詳細はコチラを確認願います。
日本の新幹線に乗車したジョコ大統領の感想
先日のジョコ大統領訪日時も新幹線の導入は話題になっていましたが、トヨタからの投資16億ドルを取り付けるべく、東京から名古屋へ新幹線で移動したジョコ大統領の日本の新幹線に関する感想は何であったかご存じでしょうか。 「富士山を見た後は寝てしまったので、よくわからん」 です。そしてインドネシアでの新幹線導入に関しては、今年中には具体的にわかると述べ、翌日の北京で早々インドネシアは「ジャカルタ-バンドゥン高速鉄道建設プロジェクトに関する覚書」に調印しています。
バンドゥン市長リドワン・カミルの発言
バンドゥン市は今回の鉄道建設計画の発着駅でありプロジェクトの利害に直接かかわるホスト都市です。このバンドゥンのリドワン・カミル市長は今年に入って、複数のインタビューでジャカルタ-バンドゥン高速鉄道建設は中国が現実であるという発言をしています。アジア・アフリカ会議のホスト都市を務めたバンドゥンですが、この会議直前にもNET.テレビの取材に対し、「鉄道建設は中国と、スマートシティは日本と、ゴミ処理についてはドイツとオーストラリア」といったふうに切り分けて協力体制が出来上がっていると回答していました。
現地メディアでは「Shinkansen」という単語とともに新幹線は話題の一つとなっています。政府は優先9要綱Nawa Cita(公約)に従い地方の鉄道建設を優先するためジャカルタ-スラバヤ間高速鉄道の国家としての計画は中断する(5年間の国家予算に組み込まない)といった話、それでも政府はジャワ島に新幹線を建設したいらしいが、それって政府の基本政策に合致してないんじゃないですかといった話、そして最近のジョコ大統領訪日訪中及びアジア・アフリカ会議をきっかけにジャワ島での新幹線建設の実態が少しずつ具体的に掲載され始めたといった感じです。
ジャカルタ-バンドゥン高速鉄道計画
参考として、コンパスオンラインで紹介されたジャカルタ-バンドゥン間高速鉄道建設受注企業連合(コンソーシアム)を挙げてみます。まず、インドネシア側がウィジャヤ・カルヤ(国営建設企業)を筆頭に、KAI(国営鉄道会社)、レン・インダストリー(国営電子機器企業)、そしてPTPN VIII(国営プランテーション企業)。しかし、どうして新幹線建設に、プランテーション農業のPTPN VIIIが関係あるの?という話ですが、国営企業相リニによると、今回の鉄道敷設予定地の多くをこのPTPN VIIIが所有しており、土地収用を容易に行うために当国営企業をプロジェクトに参加させるそうです。 そして中国側が、China Railwayをトップに以下、China Railway International、China Railway Group Limited、Sinohydro Corporation Limited、TSDI、China Academy of Railway Sciences、CSR Corporation、China Railway Signal and Commucation Corporationによる企業連合が本プロジェクトを受け持ち、融資に関しては、中国政府が他のプロジェクトも含め、中国開発銀行及び中国工商銀行経由で5,000万ドルを準備する予定だそうです。インドネシアはインフラプロジェクトに対する国家予算の適用にとても後ろ向きです。
同区間の鉄道敷設は、出来る限り高速道路に沿わせるか、その上に高架を建設するなどして、新たな土地収用を回避する方針です。工期は3年を目指しています。日本の提案は5年でした。 ジャカルタ-バンドゥン間は約150km。日本でいうと、東京から静岡あたりといったところでしょうか。 参考として東京-新富士間146kmの距離をJR東海の新幹線こだま号は68分、運賃5,070円で結びます。ジャカルタ-バンドゥン間は想定運賃30万ルピア(約3,000円)そして、34分で結ぶそうです。こだまの倍速!傾斜のある土地で、少し飛ばしすぎな気もします。 渋滞が避けられるので、おそらく空港まで足を運ぶ必要があり、搭乗手続きも手間な飛行機を利用するより早く、確実に目的地に着くので当然利便性は抜群だと思いますが、片道30万ルピアという運賃は往復すれば現地では1か月分の家賃に相当する値段です。一般個人の利用には少し厳しいのかもしれません。 プロジェクトに絡んでくるのはいったいどこか、どこが損害を被るか、数か月後の発表を待ちましょう。
参考:
https://www.jetro.go.jp/jetro/activities/contribution/oda/model_study/infra_system/pdf/h23_result03.pdf
http://bisniskeuangan.kompas.com/read/2015/04/26/091100526/WIKA.Siap.Garap.Proyek.Kereta.Cepat?utm_source=bisniskeuangan&utm_medium=bp&utm_campaign=related&
http://bisniskeuangan.kompas.com/read/2015/04/27/131300426/Jalur.Shinkansen.Akan.Dibangun.di.Atas.Tol?utm_campaign=popread&utm_medium=bp&utm_source=bisniskeuangan
http://www.tempo.co/read/news/2015/03/25/058652667/Kereta-Cepat-Jakarta-Bandung-Jokowi-Kaji-Teknologi-Cina
https://www.youtube.com/watch?v=lX_d5rkYl7c