2015年インドネシアニュース・ベスト10【国内編】

いんどねしあ新聞が独断と偏見で選ぶ2015年度インドネシアニュース国内編ベスト10。2015年は、ジョコ新政権が動き出した実質一年目の年でしたが、出だしから多くの問題に見舞われることとなりました。政府は、継続して発生する各種問題に対応しながら経済低迷への対処として、小刻みな経済対策を定期的に発表しつつ、8月には早くも経済閣僚を中心に一回目の内閣改造も行われましたが、ポジティブなニュースよりネガティブなニュースが先行するといった印象のまま2016年を迎えることになったといった感じでしょうか。では。

 

2015年インドネシアニュース・ベスト10【国内編】

1位:インドネシア・エアアジア8501便捜索活動
2位:新警察署長就任顛末とKPK弱体化
3位:フリーポート汚職疑惑と国会議長辞任
4位:インドネシア地方統一首長選挙
5位:不法漁船撃沈&スシ海洋大臣
6位:麻薬犯に対する死刑執行
7位:第一次内閣改造
8位:オンラインバイタクGo-jek躍進
9位:パプアとアチェでの住民紛争
10位:トランスジャカルタ炎上

 

1位:インドネシア・エアアジア8501便捜索活動

2014年12月28日にカリマンタン島沖で墜落したインドネシア・エアアジア8501便の捜索が続けられました。残念ながら生存確認はゼロ、乗客155名、乗員7名の全員が死亡したと見られています。なお、インドネシア政府は早い段階から各国の支援を受け入れ、インドネシア軍を中心として、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、フランス、韓国、日本、アメリカ、中国、ロシアとの協力体制のもと、捜索活動が行われました。

 

 

2位:新警察署長就任顛末とKPK弱体化

ジョコ大統領が指名した次期警察署長候補ブディ・グナワンがその直後に汚職撲滅委員会(KPK)から汚職容疑指定を受けました。これに対し、ブディを推す与党PDIP党の幹部自らがKPK委員長サマッドのスキャンダルをぶちまけ、それに呼応して今度は突然KPK副委員長バンバンが警察により汚職の疑いで逮捕、更に他のKPK副委員長2名もそれぞれ別件で告訴され、最終的に委員長のサマッドも偽造文書の件で警察から正式に容疑者指定を受け、インドネシアでは「汚職撲滅委員会VS警察新章突入」「KPKの壊滅」と大きなニュースとなりました。更に、汚職容疑を受けたブディはKPKによる捜査の不法性を地方裁に予審を訴え、勝訴に至ります。最終的にジョコ大統領は民意を選択し、ブディ・グナワンの警察署長就任取消を発表、副所長のバドロディンハイティが繰り上がって警察署長に任命されました。本件の詳細は、こちらのサイトの詳細の記述があります。本件は、大統領とその背景構造を浮き彫りにし、世論という大統領の支持基盤を失いかねない、また、KPKの弱体化にも結びついたジョコ政権最初の大きな試練となりました。

 

 

3位:フリーポート汚職疑惑と国会議長辞任

米国の鉱山会社フリーポート社の契約更新に絡み、国会議長のセティヤが大統領・副大統領の名前を騙って同社の株を譲渡させようとしたというスキャンダルを受け、セティヤが国会議長を辞職しました。スキャンダルのきっかけはフリーポート社の社長マルフ(元国家情報局副局長、空軍出身)が録音した密談データをもとに、スディルマン・エネルギー鉱物資源相が国会倫理委員会に喚問を求めたことによります。密談には、セティヤの他、マルフ、そして石油マフィアとも言われるリザ・ハリッドが出席し、フリーポート社の契約更新に絡む裏取引が持ちかけられたとされ、更新のために大統領に11%、副大統領に9%の株式を譲渡し、セティヤ自身もパプアの水力発電計画の株式49%を要求したとされます。また録音データの中からルフット政治法務治安相の名前が66回も使われルフットも国会の喚問を受けました。スディルマン大臣は過去に石油会社プルタミナの元社長アリ・スマルノ(現国営企業相リニの兄)のもと、2004年当時にペトラル社の派閥闘争でリザ・ハリッドと敵対した過去を持ちます。因みに密談自体は2014年6月に行われており、暴露されたのは11月。12月の地方首相選に合わせたのかもしれません。どちらにしても、インドネシアの鉱物資源の闇が浮かびうる事件となりました。ということで、事の真相はうやむやにおわってしまうかもしれません。

 

 

4位:インドネシア地方統一首長選挙

インドネシア初の地方統一首長選挙が2015年12月9日に全国各地で平和裏に行われました。実はこの直接選挙による地方首長選挙は、2014年に、その存続自体が危ぶまれたことがあります。2014年10月、野党を中心とする国会は、間接選挙による地方首長選挙の法案を一旦可決させましたが、これが世論の激しい批判に遭い、最終的にユドヨノ前大統領が政令を発表、2015年1月の国会総会で地方首長選改正特別条例が可決、今回の直接選挙による地方首長選が守られる結果となりました。

 

 

5位:不法漁船撃沈&スシ海洋大臣

ジョコ政権の看板大臣、スシ海洋水産大臣は密漁船撃沈やトロール漁法の禁止、 大型船に対する操業許可の一時発行停止など、様々な施策を強行し国民の支持を得ました。彼女が率いる海洋水産省は2015年最終日の12月31日にも10隻の不法漁船の撃沈処理を行い、年間で合計117隻の密漁船を海に沈めました。これらの処理は、違法漁船は陸で法的手続きを経た上で施される訳ですが、一部日本メディアは相変わらず「中国船を見せしめで爆破」とか、117隻の内唯一1隻の中国船(しかも拿捕は6年前の代物)の沈処理を大きく取り上げ、バズってました。ガラパゴスです。詳細は「インドネシアの中国船爆破と見当違いな某日本メディア」をご確認下さい。

 

 

6位:麻薬犯に対する死刑執行

ジャワ島のヌサカンバンガン島で、麻薬犯8名に対する銃殺刑が執行されました。8名のうち7名は外国人。また、フィリピン人受刑者メリー・ジェーンの死刑はフィリピン政府のロビー活動により土壇場で延期されました。メリーの件については当サイトでも特集を組みました。詳細は「インドネシア麻薬死刑囚フィリピン人 メリー・ジェーン物語」をどうぞ。

 

 

7位:第一次内閣改造

新政権発足から10か月足らずの8月12日、当初から噂されていた内閣改造が実施されました。変更点は主に経済成長の低迷を打開するための経済閣僚の刷新です。具体的には、国家開発計画相、海事担当調整相、経済担当調整相、商業相が交代となりました。そして、大統領と与党との通気性を阻害していると与党PDIP党から非難されていたアンディ内閣官房も更迭され、同ポジションにPDIP党幹部のプラモノが収まりました。また、古くからジョコ大統領との関わりが深かった元大統領首席補佐官のルフットが政治・法務・治安担当調整相のポストに上がってきました。尚、今回の改造で知日派として知られるラフマット・ゴーベル商業大臣も政府を去りました。第一次改造内閣リストの詳細は「インドネシア内閣閣僚名簿(ジョコ・ウィドド政権)」をどうぞ。

 

 

8位:オンラインバイタクGo-jek躍進

2015年は配車アプリサービスのバイタクGo-Jekが躍進しました。既存のバイタクOjekの市場を、廉価で明快なシステムと運賃、配送を絡めた各種サービスで圧倒し始めた最初の年と言っていいと思います。その反発として既存Ojekとのいざこざや、法の未整備によるグレーゾーンなどから政府・当局との摩擦も絶えませんでした。私の超個人的な感想ですが、相互扶助的な古き良き人間臭さが残るチンピラ的な空間が、企業原理に飲み込まれていくのを目の当たりにしているようで、素直にGo-Jekの躍進を喜べません。冷房が効いた明るいコンビニよりツケの効くおばちゃんのワルンに残ってほしいです。。

 

 

9位:パプアとアチェでの住民紛争

2015年は、キリスト教徒が多数派であるパプア・トリカラで、キリスト教系住民によるイスラム住民に対する投石・放火などの襲撃事件が、また、スマトラ島アチェ・シンキルではイスラム教徒によるキリスト教会への焼き討ち・暴動事件が発生しました。日常、多民族・他宗教が同じ空間で生活しているインドネシアでは、こういった宗教絡みの事件に対してはシビアで、互いを牽制しあう空気や冷静を呼びかける空気が政府発表だけでなく、ソーシャルメディアを通しても垣間見られますが、それらは基本的に冷静と協調を呼びかけるものが圧倒的に多い気がします。しかし、選挙前のインドネシアは、宗教や出身、所属団体などの属性を絡ませた諸問題が発生しやすい印象があるので注意が必要です。

 

 

 

10位:トランスジャカルタ炎上

今年もジャカルタのバスはよく燃えました。

 

以上です。 最後までお付き合い頂きありがとうございます!

 

 


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