ジャカルタ爆弾テロ 現状のまとめ

2016年1月14日にジャカルタのタムリン通りで発生した爆弾テロ事件の現状情報について時系列を中心にまとめました。

 

 

事件現場

現場はジャカルタのビジネス中心街、日系企業なども多く参入するタムリン通りサリナ地区。日本の戦後賠償で建てたられたサリナデパートの目の前で起った事件だが、サリナデパート自体の被害はない。下記は今回爆破テロが起った中央ジャカルタ・タムリン通りサリナ地区の交差点付近。左奥にスターバックスが、右に回転させると警察詰所が見える。

 

 

ジャカルタ爆弾テロの時系列

本テロは、スターバックス爆破(自爆)に始まり、その直後の警察詰所爆破、続けて実行犯2名による警察、一般市民への銃撃、最終的にこの実行犯2名の射殺により幕を閉じた。この間手投げ弾も含め大小6回の爆発が発生。実行犯は4名、全員インドネシア人。実行犯全員が死亡したほか、一般市民5名も事件に巻き込まれ死亡。その他、警察・一般市民あわせて22名が重軽傷を負った。以下に事件当日の時系列を示す。

 

10:39頃~

bom-seq-2サリナデパート前スカイラインビルに入居するスターバックス内で自爆テロ。実行犯は爆破で即死。店内の従業員、店員が爆風やガラス破片などで負傷。

スターバックス爆破の11秒後、サリナデパート前交差点にある警察詰所で爆発。実行犯はバイクで警察詰所を襲いスイッチ式爆弾を仕掛ける(1月20日時点の警察情報では、自爆ではない)。この爆発で爆弾を仕掛けた実行犯1名と一般市民2名が死亡。

 

10:44頃~

警察がタムリン通りを封鎖。事件現場には人だかりができる。

 

10:47頃~

タムリン通りスターバックス方面から拳銃で武装し爆弾を所持する実行犯2名が現れる。道路の脇で話し合う2名は落ち着いて見える。

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引用: tempo.co

 

10:48頃~

bom-seq-3実行犯2名が落ち着いた趣きで別方向へ歩き出す。1名は警察詰所爆発現場に群がる群衆側へ、もう1名はスターバックス前駐車場方向へ移動を開始。群衆側へ向かった実行犯が突如、周辺の警察、市民に向け発砲。スターバックス側に向かった実行犯も警官に向け発砲。付近の群集及び警察が一斉避難。実行犯は閑散となったタムリン通りからスターバックス前駐車場へ移動。この銃撃で一般市民1名が死亡、警官、市民複数名が負傷。先にスターバックス方向へ向かった実行犯1名がスターバックス前で一般市民2名(うち一名はアルジェリア系カナダ人)も射殺。

 

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引用: tempo.co

 

上記、スターバックス爆発→警察詰所爆発→タムリン通りでの実行犯2名による襲撃まで。

 

10:49頃~

bom-seq-4 (1)

警察隊が現場へ到着。実行犯と警察との銃撃戦が約11分続く。実行犯は手投げ弾も使用。

 

スターバックス前に陣取った実行犯2名が所持する爆弾が突然爆発。映像からは自爆ではないように見える。

 

爆発のダメージを受けた実行犯を警官(白の私服)が射殺。

 

 

事件後の進捗

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シリアからテロを指揮したとされるバフルン・ナイム

テロ当日にISIS関連メディアからの犯行声明(ロイター)。また、インドネシア警察は、シリアに滞在しているとされるインドネシア人、バフルン・ナイムが本テロの黒幕ではないかと疑っている旨を発表。バフルンは2010年、オバマ大統領の訪イに対する妨害が疑われ、銃器所持で逮捕。出所後の2014年にシリアへ渡ったとされている。1983年生まれと若く、大学ではコンピュータ学を専攻している。

インドネシア警察は事件直後に、テロ関連容疑者の一斉取り締まりを実施。結果、西ジャワ、中部ジャワ、東カリマンタンなどで合計13名を逮捕。ただし、このうち本テロへの関与が疑われる者は6名のみ。残りは別件の銃器所持などで処理中。警察の発表では、この中にはシリアからの資金受け取り担当も含まれるという。シリアからはウェスタンユニオンのサービスを経由し、1回に付き、4~7000万ルピアの資金をインドネシアへ流れていたとのこと。

尚、警察は2015年12月の時点でISISからの資金流入を把握。年末年始に合わせインドネシアをターゲットにテロを行う情報を掴んでいた。この際に、スマトラ1か所、ジャワ2か所、カリマンタン1か所でのテロ発生の可能性を述べたが詳細は地域の不安を煽るとのことで公開せず。標的として警察、軍、高官、外国人などを上げていた。

 

現状、不可解な点が多いテロ

明確な犯行現場はスターバックスと警察詰所。日本の戦後補償で建てられたサリナデパートと今回のテロ現場であるサリナ地区に日本事務所が多いことから、日本もテロのターゲットにされているのではという心配をされる方もいると思うが、日本人を明確にターゲットにしている形跡は見当たらない。スターバックスも外国人をターゲットとするというより、斜め正面にある警察詰所を爆破するための導線として、警備が薄く比較的犯行を実施しやすい路面の一般店舗を選んだのではないか。また、これまでインドネシアで起きた爆弾テロや、中東・ヨーロッパでのISIS関連テロと比べると、設備と計画性が貧弱である。更に当初パリに続く連続自爆テロ的な扱われ方をしかけたこのジャカルタ・テロだが、最終的に、自爆テロを実行に移したのは1名だけであり、その他3名は恐らく本人らからすれば不名誉な死を迎えている。現時点で、インドネシアにシリア帰りや多くのIS支持者がいるとしても、これを持って「ISがインドネシアを大きな力を持っている」と考えるのは早急ではないか。また、不可解な点も多い。殺戮がテロの目的であるとすれば、なぜ昼休みではなく、午前10:40という時間にスターバックスを襲撃したのか。 なぜ実行犯は大型爆弾を背負いながら路上で銃撃戦を仕掛ける必要があったのか。彼らは警察に発見されてやむを得ず戦闘を行ったのではない。そして、メディアが訓練を受けていない素人の犯行だと報道する中、あの2名(一名はアチェで軍事訓練を受けている)の落ち着き払った行動にはどういう意味があるのか。警察の報道発表も当初からコロコロ変わっており、現時点を持っても、事件の全容を明確に捉えることは難しい。

 

参考:
時系列1 tempo.co
時系列2 kompas.com
時系列3 kompas.com
テロ容疑者人数 kompas.com

 




 


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